32歳まで処女だった彼女が女性用風俗を使った理由|“自分には無縁”だと思っていた世界の話

※本記事は、女性用風俗を利用した女性への取材内容をもとに構成したルポ風記事です。個人が特定されないよう、一部の設定や表現は調整しています。
32歳まで処女だった。
それを、彼女は長いあいだ「少し珍しいこと」だと思っていた。けれど同時に、それを誰かに話すことも、真正面から見つめることも避けてきたという。
今回話を聞いたのは、仮名・ミキコさん、32歳。落ち着いた話し方をする人だった。自分のことを過剰に不幸だとも、特別だとも言わない。ただ淡々と、「たまたまここまで来てしまった感じです」と笑った。
そんな彼女が、ある日女性用風俗、いわゆる“女風”を使った。
どうしてそこにたどり着いたのか。実際に使って、何が変わったのか。今回は、ミキコさんの言葉をもとに、その経緯を聞いてみた。
「自分には無縁」だと思っていた女性用風俗

ミキコさんが女性用風俗の存在を強く意識し始めたのは、ここ最近のことだという。
「SNSとかで見るようになって、こんな世界が今の時代あるんだな、って思ったんです。正直、それまでは私には関係ないものだと思っていました」
彼女は32歳まで処女だった。恋愛経験がまったくなかったわけではない。ただ、交際まで進まなかったり、関係が深まる前に終わってしまったりして、“性”についてはずっと遠いところに置かれたままだった。
30歳を過ぎても交際経験がないことは、彼女が思っていたほど“例外的”ではない。
国立社会保障・人口問題研究所の第16回出生動向基本調査では、18〜34歳の未婚者で「異性との交際経験あり」は男性60.0%、女性64.8%で、裏を返すと交際経験がない未婚者も一定数いることがわかる。また、未婚女性のうち「恋人または婚約者がいる」割合は27.8%で、交際相手を持たない人のほうが多数派だった。
けれど、統計がそのまま本人の孤独を薄めてくれるわけではない。
「数字で見れば珍しくないのかもしれない。でも、自分のことになると全然別でした。私はずっと、“32歳まで処女だった自分”をどこかで重く受け止めていたんです」
数字の上では“珍しくない”としても、本人の感覚は別だ。年齢を重ねるほど、経験のなさはただの事実ではなく、だんだんと自意識に変わっていく。
「男性に“経験がない”と知られることが、だんだん怖くなっていきました。これがラストチャンスかもしれない、みたいな焦りも、どこかにはあったと思います」
最初はかなり緊張した。予約するだけで手が止まった
女性用風俗を使おうと思ってから、実際に予約するまでにも時間がかかったという。
「最初は本当に緊張しました。予約画面を見て閉じて、また見て、を何回も繰り返して。自分がこういうサービスを使うこと自体に、まだどこか抵抗があったんだと思います」
当日も、かなり身構えていたらしい。
「どういう人が来るんだろう、とか、変に気まずくならないかな、とか。頭の中でずっと考えていて、行く前はリラックスどころじゃなかったです」
けれど実際に会ってみると、彼女の印象は少し違った。
「思っていたより、ずっとさっぱりしていたんです。変に距離を詰めすぎるわけでもないし、こっちが無理しないように見てくれている感じがあって」
ここでミキコさんは、少しだけ言葉を探すような間を置いてから、こう続けた。
「自分にとって“セックス”って、無縁なものだと思い込んでいたんですよね。だから実際に体験してみると、『あ、こんなものなんだ』っていう拍子抜けに近い気持ちがありました。ありえない世界だと思っていたのに、急に輪郭が出た感じというか」
「最後の手段」ではなく、視界が広がるきっかけだった
女性用風俗を使うことに対して、外からは「最後の手段」のようなイメージを持たれがちだ。けれどミキコさん自身は、少し違う受け取り方をしていた。
「確かに、最初は最後の手段みたいな気持ちもありました。でも、実際に使ってみて思ったのは、“追い詰められて行く場所”というより、“自分の思い込みを外す場所”でもあるんだな、って感じで」
昔から、どこかで「自分は恋愛ができない人間だ」と考えていたという。“普通”のことが自分ではできないことに、彼女はずっと責めていた。
「昔から“恋愛ってこういうもの”だから無理って、どこかで決めつけていたんです。でも、女風を使ってみて、ふつうって一個じゃないんだなって思えた。視界が少し広がった感じがしました」
この言葉が、この取材のいちばん大きな核だった気がする。女性用風俗を使ったことで、急に人生が劇的に変わったわけではない。けれど、自分の見ていた狭い世界が、少しだけ開いた。その変化はたぶん、数字や体験の有無以上に大きい。
一週間後、彼女は処女を卒業した
面白かったのは、その後の変化だ。取材の中で、ミキコさんはこんなことを話してくれた。
「そのあと一週間もしないうちに、マッチングアプリで処女を卒業しました。」
女風を経験したあと、彼女はそれまで避けていたマッチングアプリにも手を伸ばした。そして、その一週間後、処女を卒業した。
「2〜3回アプリで男性と出会った後、すっぱりやめました。たぶん、彼氏ができたわけじゃないけど、自分の中で自己嫌悪みたいなものが少し減ったんだと思います。足りない自分を埋めるために、必死で何かしなくちゃって感じが前より薄くなって」
女性用風俗が、すべての答えになるとは限らない。けれど少なくとも彼女にとっては、『自分はおかしいのではないか』という思い込みを、少しだけ緩めるきっかけにはなった。
女性用風俗は、誰かを救う“正解”ではない。でも、選択肢にはなる
女性用風俗について書くとき、どうしても刺激の強い話だけが目立ちやすい。けれど実際に話を聞いていると、利用理由はもっと静かで、もっと個人的だ。
経験のなさへの焦り。
誰にも言えない引け目。
“普通”に乗れなかった感覚。
そういうものを抱えたまま生きてきた人にとって、女性用風俗は単なるサービスではなく、「こんな世界もある」と知る入口になることがある。
もちろん、万人にすすめたいという話ではない。合う・合わないはあるし、利用前には不安もつきまとう。だからこそ、気になる人は、いきなり申し込む前に情報を集めて、自分にとって無理のない選択肢かを考えることが大切だと思う。
まとめ|“自分には無縁”だと思っていた世界に、彼女は一歩だけ入ってみた
32歳まで処女だったミキコさんにとって、女性用風俗は最初、かなり遠い世界にあった。
けれど実際に使ってみてわかったのは、それが単なる刺激的な体験ではなく、自分の思い込みを少し外してくれる出来事にもなりうるということだった。
「ありえない」と思っていたものに触れてみたことで、むしろ自分を責める気持ちが少し減った。視界が広がった。そんな変化も、確かにあるのだと思う。
もし今、女性用風俗が気になっているけれど、自分には無縁だと感じているなら。その感覚ごと、否定しなくていいのかもしれない。
一歩踏み出すかどうかは別として、まずは「そういう選択肢もある」と知ることから始めてもいい。



